地絡継電器(DGR)の役割と交換時期とは?高圧受電設備を守る仕組みと更新の目安を帯広の電気工事士がわかりやすく解説します

高圧受電設備

こんなお悩みはありませんか?

  • キュービクルの中に「DGR」と書かれた機器があるが、何のためのものかわからない
  • 年次点検のたびに「継電器試験」をしていると聞くが、何を確認しているのか知りたい
  • DGRが古くなっているが、いつ交換すればいいのか判断できない

 この記事では、高圧受電設備(キュービクル)に設置されている地絡継電器(DGR)の役割・仕組み・劣化のサイン・交換の目安を、帯広・十勝エリアで50年以上の施工実績を持つセイトー電設がわかりやすく解説します。

📖 読了時間の目安:約11分

 セイトー電設は帯広・十勝エリアで創業50年以上、工場・農業法人・商業施設の高圧受電設備の工事・保安管理支援を手がけてきました。この記事は「DGRって何をする機器なの?」という現場の声をもとに作成しています。

まず基本から。「地絡」とは何か?

 地絡とは、高圧電気設備において電気が本来流れるべき配線以外の場所(大地・筐体など)に漏れ出す現象のことです。一般的な低圧設備(家庭や店舗)では「漏電」と呼ぶのに対し、高圧設備(6,600V)では「地絡」という言葉を使います。

 高圧6,600Vの電気が地絡すると、感電による重篤な人身事故・電気火災・機器の損傷につながるリスクがあります。また、地絡が発生した状態を放置すると電力会社側の設備や他の需要家への影響を及ぼすこともあるため、発生と同時に素早く回路を遮断することが求められます。

地絡が発生する主な原因

  • 高圧ケーブルの絶縁劣化:経年による絶縁体の硬化・ひび割れで電気が漏れ出す
  • 機器内部への水分侵入:結露・浸水による絶縁不良
  • 小動物・虫の侵入:ネズミや虫がキュービクル内に入り込み、配線を傷つける
  • 接続部の汚損・腐食:端子部の錆・汚れによる絶縁抵抗の低下

 北海道・十勝エリアでは厳しい寒暖差によるケーブル被覆の劣化や、農業施設における粉塵・湿気の影響で、地絡が発生しやすい環境が整いやすい傾向があります。日常的な点検と適切な保護機器の維持が特に重要なエリアです。

地絡継電器(DGR)とは何か?役割と仕組みを解説

 地絡継電器(DGR)とは、高圧受電設備内で地絡(漏電)の発生を検知し、PAS(高圧気中負荷開閉器)などの遮断機器に遮断信号を送る保護装置のことです。

 DGRはDirectional Ground Relay(方向性地絡継電器)の略称です。「方向性」とは、地絡が自社設備の内側(需要家側)で発生したものか、電力会社側(電源側)で発生したものかを区別できる機能のことで、不必要な遮断(誤動作)を防ぎながら確実に自設備内の地絡だけを検知します。

GR(地絡継電器)とDGR(方向性地絡継電器)の違い

項目 GR(地絡継電器) DGR(方向性地絡継電器)
地絡の検知 電流の大きさで検知 電流の大きさ+方向で検知
誤動作のリスク 電源側の地絡でも動作する場合がある 自設備内の地絡のみに動作する
現在の主流 古い設備に多い 現在の標準仕様

 現在は誤動作を防ぐ「方向性」を持つDGRが標準となっています。古い設備でGRのみが設置されている場合は、DGRへの更新を検討することをおすすめします。

DGRとPASはセットで機能する

 DGRは単独で電気を遮断するのではなく、PAS(高圧気中負荷開閉器)と連携して機能します。この2つの機器がセットで正常に動作することで、はじめて地絡から設備を守ることができます。

地絡発生時の動作の流れ

  1. 高圧ケーブルや機器内で地絡が発生する
  2. DGRが地絡電流を検知し「地絡が起きた」と判断する
  3. DGRがPASに遮断信号(トリップ信号)を送る
  4. PASが高圧電源を遮断し、設備を停電させる
  5. 地絡が遮断され、感電・火災・機器損傷を防ぐ

 DGRとPASは「検知役」と「遮断役」の分業体制で設備を守っています。どちらか一方が故障・劣化していても保護機能は正常に働きません。DGRが地絡を検知できなければPASは動作せず、PASが動作不良であればDGRが信号を送っても遮断されません。両方を定期的に点検・更新することが重要です。

DGRが検知する2つの信号

 DGRは地絡を検知するために、以下の2つの信号を使います。

  • 零相電流(I₀):地絡が発生すると、三相のバランスが崩れて零相電流が流れます。これをZCT(零相変流器)で検出します
  • 零相電圧(V₀):地絡時に発生する電圧の不平衡をZPD(零相電圧検出装置)または EVT(接地形計器用変圧器)で検出します

 DGRはこの2つの信号の大きさと位相の関係(方向)を組み合わせて、自設備側の地絡かどうかを正確に判断します。この精密な判断ができることが、DGRの最大の特長です。

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DGRが劣化・故障するとどうなるか

 DGRは電子部品で構成された精密機器です。年数とともに内部部品が劣化し、正常に動作しなくなるリスクが生じます。故障の仕方によって、施設に与える影響が大きく変わります。

故障パターン① 感度低下(地絡を検知できなくなる)

 最も危険な故障パターンです。地絡が発生しても検知できず、遮断信号がPASに送られません。その結果、高圧電気が地絡した状態のまま設備が動き続け、感電・電気火災・機器の焼損につながるリスクが高まります。外見からは正常に見えていても内部で劣化が進んでいるため、年次点検での継電器試験が欠かせません。

故障パターン② 誤動作(地絡していないのに遮断する)

 DGRが誤って地絡と判断し、PASに遮断信号を送ってしまうパターンです。工場の生産ライン・酪農施設の搾乳設備・農業ハウスの温度管理システムなどが突然停止し、業務に深刻な影響を与えます。誤動作が続く場合はDGRの劣化が疑われます。

故障パターン③ 動作特性のずれ

 DGRが動作する電流値・電圧値・時間の設定値(整定値)が、経年劣化によってずれてしまうパターンです。小さな地絡では動作しなかったり、逆に敏感すぎて誤動作したりするようになります。年次点検での継電器試験で整定値の確認・調整を行うことで早期発見できます。

DGRの交換時期の目安と年次点検の重要性

 DGRの推奨交換年数の目安は、一般的に15〜20年とされています。ただし、設置環境(高湿度・粉塵・振動など)によって劣化が早まるケースがあります。帯広・十勝の農業施設・酪農施設では、過酷な環境による早めの劣化に注意が必要です。

交換を検討すべきサイン

  • 設置から15年以上が経過している:メーカーの推奨更新年数の目安に達しています
  • 年次点検の継電器試験で動作時間・動作電流が規定値を外れてきた:整定値のずれが年々大きくなっている場合は交換時期のサインです
  • 説明のつかない停電(誤動作の疑い)が発生している:地絡以外の原因での誤トリップが起きている可能性があります
  • メーカーの製造終了・部品供給終了品である:故障時に修理・部品交換ができなくなります
  • GRのみの設置でDGRに未更新:方向性のない古いGRはDGRへの更新をおすすめします

年次点検での継電器試験(リレーテスト)が重要な理由

 DGRは外観からは正常に見えても、内部の電子部品が劣化していることがあります。年次点検で行われる継電器試験(リレーテスト)では、専用の試験器を使ってDGRに地絡時と同じ信号を疑似的に入力し、正しいタイミングで遮断信号が出るかを数値で確認します。

 試験で測定した「動作電流値」「動作時間」「動作電圧値」などを毎年記録し、経年変化をグラフで追うことで、交換時期の判断がより的確になります。「毎年ほぼ同じ値なら問題なし、年々数値がずれてきたら要注意」というシンプルな見方が基本です。

DGR交換工事の流れと帯広・十勝での事例

 DGRの交換は、高圧受電設備内の作業となるため、電気工事士の資格を持つ専門業者が行う必要があります。工事は年次点検(停電点検)とあわせて実施するのが最も効率的です。

交換工事の一般的な流れ

  1. 現地確認・機器選定:既設DGRの型番・整定値・ZCTとの接続仕様を確認し、適切な後継機器を選定します
  2. 整定値の引き継ぎ確認:保安管理を担う電気主任技術者(または委託先)に整定値を確認します
  3. 停電・既設機器の取り外し:年次点検の停電に合わせて旧DGRを撤去します
  4. 新機器の取り付け・配線接続:新しいDGRを取り付け、ZCT・ZPD・PASとの配線を接続します
  5. 整定値の設定・動作試験:新しいDGRに整定値を設定し、継電器試験で正常動作を確認します
  6. 受電再開・記録書の整備:動作確認後に受電を再開し、工事記録を整備します

事例① 農業法人での年次点検時に発覚したDGRの動作不良

 十勝エリアの農業法人様での年次点検で、DGRの継電器試験を実施したところ、動作時間が整定値を大幅に上回る結果が出ました。設置から18年が経過した機器で、内部の電子部品の劣化が疑われました。点検当日の停電に合わせてそのままDGRを交換し、動作確認まで完了できた事例です。年次点検と更新工事を同日に実施することで、追加の停電日程を設けずに済みました。

事例② 帯広市内の工場でGR→DGRに更新したケース

 帯広市内の製造工場では、設置から25年以上が経過した旧式のGR(方向性なし)が使用されていました。電源側で地絡が発生した際に自社のGRが誤動作して生産ラインが停止したことがきっかけで、方向性を持つDGRへの交換を決断されました。DGR更新後は誤動作による不要停電がなくなり、安定した操業が続いています。

事例③ 酪農施設での設備更新に合わせたDGR交換

 十勝エリアの酪農施設では、キュービクル全体の更新工事に合わせてDGRも新機器に交換しました。高湿度・アンモニア臭が漂う酪農環境は電気機器の腐食を早めるため、推奨年数より早めの更新をご提案しました。更新後の継電器試験では整定値どおりの動作が確認でき、保安管理が強化されました。

よくある質問

Q. DGRとPAS、どちらを先に交換すべきですか?

 DGRとPASはセットで機能する保護システムです。どちらかが故障しても地絡から設備を守れなくなるため、設置年数・点検結果・劣化の状況を総合的に判断して決定します。2台とも設置から15〜20年が経過している場合は、同時更新を検討することをおすすめします。セイトー電設では現地確認のうえ、優先度を含めたご提案をします。

Q. DGRの整定値は誰が決めるのですか?

 DGRの整定値は、電気主任技術者(または保安管理を委託している保安協会・電気管理技術者)が設定します。電気工事会社は整定値の設定指示を受けて工事・配線を行います。整定値は自社設備の構成や電力会社との協議に基づいて決まるため、交換時には保安管理担当者と連携することが必要です。

Q. DGRの交換は年次点検以外のタイミングでもできますか?

 可能ですが、DGRの交換には設備の停電が必要なため、年次点検の停電に合わせて実施するのが最も効率的です。別途停電を設定する場合は、テナント・従業員への告知・業務への影響の調整が必要になります。「次の年次点検まで待てない状態」と判断される場合は早急な対応が必要ですので、ご相談ください。

Q. GRしか設置されていませんが、DGRに交換すべきですか?

 現在の標準仕様はDGRです。GRのみの設備では電源側の地絡で誤動作するリスクがあり、不要な停電が発生することがあります。設置から年数が経過している場合はGRからDGRへの更新をおすすめします。既存のZCT・ZPD・PASとの接続仕様の確認が必要なため、まずは現地確認にてご相談ください。

Q. 自社のDGRがいつ設置されたかわかりません。どうすればいいですか?

 保安管理を委託している保安協会・電気管理技術者に問い合わせると、点検記録から設置年数が確認できる場合があります。記録が残っていない場合は、DGR本体に記載されている製造年月日シールで確認することもできます。セイトー電設でも現地確認の際に機器の製造年・型番を確認してお伝えしますので、まずはご相談ください。

まとめ

 この記事のポイントをまとめます。

  • 地絡継電器(DGR)は高圧設備内の漏電(地絡)を検知し、PASに遮断信号を送る重要な保護機器です
  • DGRとPASはセットで機能する「検知役と遮断役」の分業体制です。どちらか一方の不具合でも保護機能が失われます
  • DGRの推奨交換年数の目安は15〜20年で、帯広・十勝の農業・酪農施設では環境負荷による早めの劣化に注意が必要です
  • 年次点検での継電器試験(リレーテスト)の結果を毎年記録し、経年変化を確認することが交換時期の正確な判断につながります
  • DGRの交換は年次点検の停電に合わせて実施するのが最も効率的です。設置年数が不明な場合もまずはご相談ください

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