「古い電気設備にはPCBが含まれているかもしれない」
「処理期限が近いと聞いたけれど、何をすればいいかわからない」
そんな不安をお持ちの事業者様やビルオーナー様へ。
PCB廃棄物の処理は法律で厳しく定められており、期限を過ぎると罰則の対象となるだけでなく、事実上処分ができなくなる恐れがあります。
この記事では、特に見落とされがちな「低濃度PCB廃棄物」について、期限と対応策を分かりやすく解説します。
結論:忙しい人のための「これだけは確認!」3つのポイント
詳細を読む時間がない方は、まずこの3点だけを確認してください。
1. 処理期限は「2027年(令和9年)3月31日」まで
この日までに、処分業者への委託だけでなく「処分そのもの」を完了させる必要があります。猶予はありません。
2. 疑わしいのは「1994年(平成6年)以前」の電気機器
変圧器(トランス)、コンデンサー、安定器などが対象です。古い工場、ビル、倉庫を持っている場合は要注意です。
3. 先延ばしは危険!今すぐ調査を
期限直前は業者がパンクし、予約が取れなくなる「処分難民」になるリスクがあります。
目次
1. そもそもPCBとは?なぜ処分が必要なの?
PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは
PCBは、かつて電気機器の絶縁油(電気を通さない油)として広く使われていた化学物質です。熱に強く、燃えにくい便利な油として、変圧器やコンデンサー、業務用の照明器具などに利用されていました。
なぜ禁止されたのか
その後、「人の健康や環境に重大な悪影響を及ぼす」ことが判明しました。
- ▶︎毒性が強い(皮膚障害や発がん性のリスク)
- ▶︎分解されにくい(一度環境に出ると残り続ける)
- ▶︎体に蓄積する
1968年の「カネミ油症事件」という食品公害をきっかけに製造・輸入が禁止され、現在は法律で「持っている人が責任を持って期間内に処分すること」が義務付けられています。
古い変圧器やコンデンサなどの電気設備から、低濃度PCB廃棄物が見つかるケースが全国で増えています。 そして、この低濃度PCB廃棄物には「法律で定められた処理期限」があります。 本記事では、電気工事会社の視点から、PCBの基礎知識、対象となる設備、処理期限、リスク、確認方法までを、全国...
2. 「低濃度PCB」という落とし穴
PCB廃棄物には「高濃度」と「低濃度」の2種類があります。
- ▶︎高濃度PCB: PCBそのものを絶縁油として使用していたもの。(※こちらの処理期限は、一部を除きすでに終了しています)
- ▶︎低濃度PCB: PCBを使わないはずの機器に、製造工程などで意図せず微量のPCBが混入してしまったもの。
今回の記事で重要なのは、この「低濃度PCB」です。
「ウチの設備にはPCBは入っていないはずだ」と思っていても、微量に混入しているケースが数多く発見されており、多くの事業者が気づかないまま保管(使用)していることが問題になっています。
3. 絶対に守るべき「処理期限」の詳細
低濃度PCB廃棄物の処分期間は以下の通りです。
| 項目 | 期限 |
|---|---|
| 処分の完了 | 2027年(令和9年)3月31日まで |
ご注意ください
これは「業者に電話をした日」ではありません。「業者が処分を完了した日」です。
調査、分析、見積もり、契約、収集運搬、そして処分には数ヶ月かかることもあります。実質的なリミットはもっと早いと考えてください。
4. あなたの会社は大丈夫?チェックすべき場所と機器
以下の条件に当てはまる場合、低濃度PCBが含まれている可能性があります。
チェックすべき場所
- ▶︎キュービクル(高圧受電設備)の中
- ▶︎古い倉庫や電気室の奥
- ▶︎エレベーターの機械室
- ▶︎解体予定の工場やビル
チェックすべき機器と製造年
主に以下の機器の銘板(プレート)を確認してください。
- 変圧器(トランス)・コンデンサーなど
- ▶︎1993年(平成5年)以前に製造されたもの → PCB汚染の可能性あり
- ▶︎1994年(平成6年)以降でも、絶縁油の入れ替え履歴があるもの → 汚染の可能性あり
- 銘板がない、読み取れない機器
- ▶︎古いものである可能性が高いため、調査が必要です。
※製造年だけで100%判断できない場合もあります。最終的には専門機関による「分析」が必要です。
5. 発見した場合の対応フロー
もし「これ怪しいかも?」という機器が見つかったら、以下の手順で進めてください。
- メーカーへの確認 / 分析
メーカーのWebサイトで型式を検索するか、問い合わせてPCBの有無を確認します。
不明な場合は、専門の分析機関に依頼して、PCB濃度を測定します。 - 届出
PCB廃棄物として保管する場合、都道府県市(自治体)への届出が必要です。 - 処分業者の選定・契約
低濃度PCBは、環境大臣が認定した「無害化処理認定施設」または都道府県知事等の許可を受けた施設で処分します。(※「JESCO」は高濃度PCBの処理施設なので、低濃度は扱っていません) - 収集運搬・処分
許可を持つ運搬業者に依頼し、処分施設へ運びます。
6. まとめ:今動かないと手遅れになる理由
「まだ2027年まで時間がある」とは思わないでください。
- ▶︎処理施設の混雑: 期限が近づくにつれ、全国から申し込みが殺到します。
- ▶︎罰則のリスク: 期限内に処分しない場合、改善命令が出され、従わないと「3年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」などが科される可能性があります。
- ▶︎資産価値への影響: PCB廃棄物が残っている建物は、売却や譲渡が困難になります。
今すぐできること:
まずは社内にある古い電気設備(特に1994年以前のもの)のリストアップから始めてください。
お悩みですか?
電気設備の確認方法がわからない、どこに分析を頼めばいいかわからない場合は、お近くの電気工事店や、自治体の環境対策課、または産業廃棄物処理業者へご相談ください。
「知らない間に法律違反」にならないために、今日から確認を始めましょう。
参考リンク・公式情報
より詳しい情報や、処分業者のリストは以下の公的機関のサイトをご確認ください。
- 一般社団法人 日本電機工業会(JEMA):PCBを含む電気機器への対応情報
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/pis/pcb/index.html
各メーカーの製造年ごとのPCB使用状況(判別表)や問い合わせ先がまとまっています。
